今読んでいるこの国のかたちの中で、心に残る章があった。
配電盤の漏電
「東大は文明の配電盤の役割を果していた。」
と司馬さんは度々語っている。
法外な待遇でお抱え外国人を雇い入れ、その間、優秀な若者達を官費留学させて、本場の学問を輸入させ、いずれお雇い外国人達の代わりとして、彼らは次々と母校東大の教壇に立った。(夏目漱石が有名ですね)
こうして、最新の近代学問を全国津々浦々まで配電したわけだが、東大から程近い神田はそんな官立大学が漏電して出来た私学のメッカなのだそうだ。
全く知らなかったが、東京理科大とは、東大理学部物理学科のOBたちが寄付でもって創立した学校なのだそうだ。トップクラスのエリートばかりで無く、現場で役立つ中間層のエンジニアが不足していて、それを育成する事が目的だった。
先生は全てこのOB達が昼間の仕事を終えてから務め、この為の給与は取らなかったとか!だから、創立当時は夜学だったそうだ。
理学部は実験器具等の設備が必要で、寄付で成り立つ理科大にはそれを買う余裕が無い。何と東大で使った機具を夜になると、人足が神田まで運び、また翌日東大の授業が始まる前にそれを戻す、、という事を毎日繰り返したそうだ。
今なら、それはそれはやかましくて、こんな事は絶対に許されないのだろうが、 明治の心意気と、皆が必死で「坂を登った」様子が手に取るように判る挿話で、読んでいてとても気分が良くなった。
司馬さんは、こんな清々しい、スカッと見晴らすような話が好きなのだと思う。「漏電」とは上手い事言うなと思ったが、自分達は、貧乏国家がナケナシの予算をはたいて育ててくれている事を、骨の随から知っていたのだろう。
脳科学者の茂木健一郎さんは、母校東大が時代遅れだ!と手厳しい。100年前の創立時代と今とでは、当然違っているのだろうが、それでも僅かな香りや気風は何処かにあるんじゃないかと、門外漢ながら期待している。資源の無い狭い国土の日本には、人しか資源は無いのだから。。
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