2012年1月7日土曜日

アゴラ読書塾 第1回「文明の生態史観」梅棹忠夫著

 池田信夫さんが主宰する「アゴラ読書塾」に初めて参加してみました。テーマは「日本人とは何か?」
非常に遠大な設定で、日本人でありながら、改めて問われると「うっ」と言葉に詰まる問いです。

「なにゆえ、あんな製品が出来るのか?」
「なにゆえ、あんな人が昇進するのか?」
「なにゆえ、問題を見なかった事にするのか?」
「なにゆえ、なにゆえ。。」

「なかなか答えが見えない問い」を考えていると、行き着く先に、この「日本人とは何か?」という問いが待っているように思います。
自分の読解力と思考力がどこまでついて行けるのか、甚だ不安ながらも一人で考えているより、新しい視点が開けるだろうと、あちこちに頭を下げて全12回の読書塾に参加する時間を捻出しました。(協力してくれる家族に感謝です。)

毎週1冊「お題」となる本を読んで、それを中心に、参加者と池田先生による討議が予定されています。
 昨夜はその第1回。梅棹忠夫著「文明の生態史観」でした。

文明の生態史観概要
不勉強で、この本の存在を全く知ず「へぇ〜!」と思う事ばかり。(自分の趣味ばかりで本を読んではいけませんね。)
「蒙を開かれる」とはこの事で、昭和30年代にこんな大胆な「文明を論じた説」があったとは驚きです。
さて、大雑把に言ってしまうと、この本の言わんとする所は、下記の図に集約されています。
文明の生態史観(筆者がリライト)
 梅棹先生は、元は京大の理学部出身でいわゆる「理系」畑の人(動物学専攻)。自身が学術調査の為に訪れたアジア地域(内蒙古、アフガン、バングラディシュ、インド、東南アジア等)を直に回った経験から、
「文明が成立するには、地理的条件(生態学的条件)が深く関係している。」
との仮説を立て、それを一枚の図に示したものです。考察の対象はとりあえず「ユーラシア大陸」に限定しているのは、いわゆる「四大文明」がユーラシア大陸とそれに近い地域(北アフリカの東)で起きているからかも知れませんが、それまで
「文明は直線的に段階を踏んで発展する」(唯物史観:下図参照)
と考えられていたのとは、全く発想が異なって、新鮮な衝撃と刺激を与えたそうです。
梅棹論を大胆に意訳すれば、、
ユーラシア中央部を斜めに走る「大乾燥地帯」には遊牧民がおり、そこは「暴力と破壊の巣窟」となって、周辺の「準乾燥地帯(サバンナ)」に発達した文明社会(中国/インド/ロシア/地中海・イスラム)をしばしば脅かし、文明社会はその打撃との攻防と回復の繰り返しだった。
一方「暴力の源泉」から遠かった「西ヨーロッパ」や「日本」はぬくぬくと温室の中で育ち、独自の発達を遂げる。地理的に最も遠い「西ヨーロッパ」と「日本」は文明の発達の型の系譜が非常に似ている。もし、日本が江戸時代に「鎖国」をしなければ、織豊時代に盛んに交易して東アジア地域に作った「日本人街」を発展させ、インドあたりでイギリスと衝突していたかも知れない。
 なかなか大胆な説です。そして、物議をかもしただろうなと思うと同時に、凄く魅力的でもあります。先の図は、読書会で話された内容を少し加味して、私なりにリライトしたもので、本書の中ではもっと素っ気ない「直線的図形」です。
「色使い」や「情報」を少し加えて自分で書き起してみると、実感としてこの学説の正しさを感じられます。(学術的には、こんな「小手先の装飾」をあまり加えない方が良いのかも知れませんが)
「日本海(対馬海峡)」の存在は大きいと思ったので、僅かに離して「日本という国の特殊性」を出してみました。(昨夜もそこがポイントでした)

唯物史観の直線的発達段階



分権と集権、OPENとCLOSED
池田先生の博識な解説を伴って、「梅棹論」を補強する形で読書会は進行しましたが、最も秀逸だったのが、下記の図でしょう。
「ああ、こんな時に2X2のマトリックスを使うんだな。」
と、自分の能力の低さにガッカリ。思考を深めるにも経験とテクニックの修練が必要だとここ数年痛感しています。

「西ヨーロッパと日本が似ていると言うが、なぜ日本では、かの『個人主義』が発達しなかったのだろうか?」
の問いに対して、描かれたのがこれです。

梅棹論と與那覇論の関係を説明するマトリクス

このマトリックスを眺めていると、今の中国に対するWhy?の答えが見えて来そうな気がします。
梅棹論は「分権が進んでおり、西ヨーロッパと日本は直線的に発達段階を踏めた。」事を論じており(つまり赤紫枠)、三回目にゲスト予定の與那覇先生は「中国は1000年も前から個人主義(OPENシステム)導入済みで日本よりずっと年季が入ってます。」のOPENの横軸(緑枠)を説明している訳です。

、、、やや先走ってしまいましたが、
  • 対角線にある「日本」と「中国」はどう付き合ったら良いのか?
  • 何度トライしてもCLOSEDの欄に引き戻ってしまう日本はどうなるのか?
など、が次回以降の根幹を成す「問い」となりそうで、なかなかエキサイティングです。

次回の課題図書は
「タテ社会の人間関係」(中野千枝著)

実はこれも既に読んでしまったのですが、少しでも「日本の組織」に属した事がある人ならば、痛すぎるほど判る話。。(うっかり何かの「長」になってしまった人は必読の書ではないでしょうか。)次週も楽しみです。


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