「アルプスの少女ハイジ」で育ったジブリ世代としては、やはり宮崎駿監督の作品と聞いたら、見に行かずにはいられない。「もののけ姫」から毎作封切り日に劇場で見て来た。(唯一の例外は「ハウル」ーーあの時は息子が「魔の二歳児」で二時間以上映画館でじっとさせてる自信が無く、泣く泣くDVD版)
今作は「潔いよいなぁ」と感じた。途中、涙がジワリ。
あの時代の日本
このブログでも頻繁に書いているけど、私は相当に歴史好きで、幕末〜昭和初期までは、かなりいろいろな本を読み込んで来た。
近代化に邁進していた頃の日本をおぼろげに思い描いていたが、世界最高水準のジブリ美術力がそれを、空気感まで再現してくれて、本当に涙ものだ。
あの頃の人々の風俗、物の考え方、どんな環境で、どんな空だったのか、、丹念に描かれていて「一瞬たりとも見逃したく無い。」と思った。いつもながらの「調べ」と「作り込み」に脱帽である。これは、まだ事情がよく判らない子どもには単調だったようで、五歳の娘は後半飽きてしまっていたが、中三の長女には丁度良かったと思う。
潔い人間達
丁寧な言葉使い、もどかしい程に通信手段の無い世の中、大工が大工道具の箱を担いで歩いている傍らで、国家の威信をかけて世界最高水準の工業技術を手に入れようとする「目一杯の背伸びと焦燥感に駆られる英才達」。。宮崎監督らしい妥協を許さない描き込みは、画面に描かれる端っこの人間にまで、「シャンと背筋を伸ばした潔さ」を感じる。
主人公「堀越二郎」はこのパンフレットだと「ちょっと優男」に見えるが、スッと見せる判断力と優しさに、あっという間に虜になる。
ネタバレになるからこれ以上は書かないけれど「ジブリもやっとここまで描けたか」と思う大人も「胸キュン」の物語である。
美しい形が最も性能が高い
宮崎監督が「飛行機好き/兵器好き」は有名だが、ゼロ戦に対して非常に敬意を払っている事がこの映画でよく判る。冒頭のパンフレットに描かれている、ちょっと変わった形の飛行機ーーこれは「九試単戦」と言って、ゼロ戦になる前の前の「ブレークスルーモデル」とも言うべき名機らしい。(まったく知らなかった)
堀越二郎が手掛けた中で、一番愛したモデルらしく「あんなに美しい飛行機は見た事が無い」と実物を見た人の証言も残っているそうだ。
新幹線の生みの親「島秀雄」も「美しい線は一番空気抵抗が低い」と言っていたし、映画の二郎も「鯖の骨の流線型が美しい」と語る。
「設計はセンスだ、技術は後からついて来る。創造的人生の持ち時間は10年だ。」と映画でカプローニ氏は語る。ああ、そうだよなぁっと思わず震える台詞だった。
初の主役声優を務めた庵野監督(非常に自然で最初気が付きませんでした)も
「72歳を過ぎてからよくこんな映画が作れた。」
と感嘆していたが(いやむしろ、その境地だから作れたのかとも、、、)いつまでも、自身に挑戦し続ける、宮崎駿監督の「負けん気」に乾杯したい映画だった。
創造的人生は短い。漫然と生きずに目一杯生きろ。
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