最新刊と去年発行された第三冊目の著作 |
一度きりの人生をシェアし合う(世界を歩いて考えよう!)
ちきりんさんは、有名人気ブロガーだが今まで実名を明かしていない。講演会もお面姿で「顔出し」をしない方だが、恐らく私より、3〜4歳年上でほぼ同年代だろう。今回の「未来の働き方〜」はこの所、私が感じていた事をズバリ明文化していて、本当に興味深かった。
彼女は所々で書いているが、出産経験は無い。証券会社や外資系企業を渡り歩き、おそらくかなり高い地位までステップアップして行った「切れ者のキャリアウーマン」だと思う。(おちゃらけ〜と自称しているけれど、彼女のブログも著作も根底に流れる考察は鋭い)バブル期に入社し、99年から子どもを産んで、30代の大半を三人の子の出産/子育てと仕事の両立にカッツカツに時間を費やした私にとっては、「世界を歩いて考えよう!」は「ひょっとしたらもう一つの人生」だったかも知れない世界に見えた。
バブル世代のご多分に漏れず、結婚前は年に一度は海外へ渡航していたし、僅かながら仕事で海外に行く経験もした。それが、結婚/出産をした途端、気が付けば15年以上日本から外へ出ていない。その気になれば出られない事は無かったが、独身時代とは比べ物にならない程、からみ付いたしがらみを、振りほどいてまで「海外へ行こう」と思う気力が無かったのが正直な所だ。(例えば、田舎を持つ配偶者と結婚すれば、長期休暇に「帰省せず孫の顔を見せに帰らない!」と決断するのはかなりの軋轢を覚悟しなければならない、、とかね。。)
「世界を歩いて考えよう!」を読んでもすぐに感想が思いつかず、ブログにも書かなかったのは「羨ましいな」とも思わなくなってしまった自分の「縮こまり具合」の現れだったのだと思う。羨ましいと思うのはまだ「健全な上昇志向」がある証拠だ。
彼女の著作は一環して「考えよう」と訴える。あらためて、もう一度「世界を歩いて〜」を拾い読みすると、現地を見たからこそ(しかも意味ある時期に)のリアルで鋭い観察が事例豊かに綴られている。ボンヤリのんびり観光してそうで、見るべきものを見、考えるのが「ちきりんさん」なのだが、彼女がこの経験を本という形にして流布してくれた意味が、最新刊「未来の働き方〜」を読んでやっと判った気がした。
結局、人は自分の人生を一度きりしか生きられない。
- 子どもを産む/産まない(或は、産めない)
- 働き続ける/続けない(或は、働けない/続けられない)
- 親の介護に時間を費やした/殆ど費やさ無かった
だからこそ「これまで歩いた道」をシェアし合いたいと渇望するのかもしれない。 本(物語)は「別の人生」を擬似的に体験出来る優れた「横糸」だ。一人一人の人生が「縦糸」なら、それをつなぎ合わせて紡ぐ役割を果たす。出来上がった布が、文化とか、文明とか、歴史、、と呼ばれるものなのだろう。
IT革命以前は、この横糸はごく限られた人しか紡ぐ事が出来無かった。それが、簡単に短時間で気軽に出来てしまうのだから凄い事だ。
そして、人生をシェアし合う段階から、時代は次へと動いていると彼女は提言している。
人生は二度ある(未来の働き方を考えよう!)
最新刊「未来の働き方を考えよう!」では
「もうお気づきだと思いますが、人生二度あるのがこれからですよ。」とデータを示しながら、彼女は縷々説明してゆく。
- 少子高齢化は確定の織り込み済み前提条件
- 定年はどんどん延びます
- グローバリゼーションの波は国家の枠関係無しです
- パワーシフトは起こっているので、パラダイムシフトせざる終えないです
と眉をひそめて暗くならないで、ワクワクしながら、考え方のシフトをチェンジしてみませんか?というのが、本書の提案主旨だ。
「最初の人生の選択(20〜30代前半)」がパッケージツアーだとしたら、「後半の人生の選択(40代以降)」はオリジナルのツアーのようなもの。最初の選択は「みんながそうしてるから」と安パイな「おススメコース」を行くが、二度目の選択はこれまでの経験から「本当に自分のやりたい事」を上手く選べるはずだ。と明快に表現する。
「子育てで30代使っちゃったなぁ。」
と未練がましく不貞腐れていた私にとって、特に以下の文章は心から嬉しかった。
これからは、前半人生は専業主婦、後半にはバリバリ働くという人も増えるでしょう。子育ては案外短い期間で終わります。人生は80年だし、働く期間も42年を越える可能性があるけれど、子どもは18歳になれば(少なくとも時間的な手間は)かからなくなります。子育て以外の人生は相当にながいのです。(中略)子育てという大事業を経験した40代の女性を雇う企業がないなどというおかしな状況が、いつまでも続くとは思っていません。人生が100年で70歳まで働くのなら、40代からキャリアを積み始めてもまったく遅くはないはずなのです。(「未来の働き方を考えよう!」p150)「若い時に身に付けた方が有利なスキル」 はいくつかあるので、何でも「人生後半に学べばいいや」と思うのはやや浅はかだが、そこは戦略的に錆び付かせない「刃物を研ぐ」知恵を働かせれば良いわけで「仕事か、家庭か、子どもか」と悲痛な選択を追い込まれるようにしなくても、思考のオプションをいくらでも変えていいのだと思える。
ちきりんさんは、巻末に「後半人生のオリジナルシナリオ」を作るポイントを書いている。
- とにかく「心からやりたい事」を意識して探せ。(これが見つかったら僥倖(ぎょうこう)それも具体的に細かく書いてみる。
- その「やりたい事」に到達する為のシナリオを複数(←ここがミソ)持て。そして、それを数年ごとに見直し、選び直しをせよ。
- 「市場で稼ぐ」力を身に付けよ。 これからは何年生き延びるのか分からない事を考えると、ストック型よりはフロー型の方が有利。市場で稼ぐ事をビビットに体験していないと折角設計した「オリジナルシナリオ」が実現出来ない。
人は市場から遠い場所で働く期間が長くなると、世の中から求められる能力や資質が伸ばせなくなります。最終的にお金を払ってくれる人を意識していると、市場がもとめるもの、評価してくれるものを提供しようという意識が強くなります。市場が求めているものとは、突き詰めれば時代が求めているものです。それを提供しようとすれば、自然と自分にも、時代が求めるスキルが身につきます。(「未来の働き方を考えよう」p212)何も市場を学ぶ事は難しい事では無い、IT革命を使えば、たった一人で、今からでも始める事が出来る。例えば、こんな風にブログを書いて、何人かが最後まで読んでくれたら「それが市場感覚だ。」ちきりんさんはそう教えてくれている。
彼女の著作は、これからも目が離せない。
0 コメント:
コメントを投稿