2013年1月6日日曜日

司馬遼太郎対話選集 全10巻読了

ずっと読み続けていた、司馬さんの対談集をお正月休みに読み終わった。今年最初のエントリーは、この全10巻の感想を簡単に。。
(一時期毎週更新していたけれど、やっぱりアウトプット疲れで、秋から冬はお休みしてました。ボチボチ続けたいと思います。)

読み始めようかどうしようか、悩んでいたのは2011年の中頃ではなかったか。。関川夏央氏の「司馬遼太郎のかたち」 を読んで、関川氏の巧みな原稿編集に「この人いい仕事するな。」と思っていたが、この「対話選集」も関川氏監修と知って、読みたい気持ちがムクムクと湧いた覚えがある。
途中、読書塾を3サイクル受講したりで、読み進めるペースが遅くなったが、ポツポツと買い集めて最初から最後まで何とか一年かけて読み切った。

最近よく見る、さらりと読み易いビジネス本に比べたら、一冊一冊、(その中に書かれている一つ一つの対談)が噛みごたえがあって、私レベルではまだまだ消化不良で、大きな「謎」が塊としてゴロゴロ頭の中に残った状態だ。高い教養や人間性を持った人同士の対談は、たった一言に「鮮やかな見識」が込められている。他の本を読んで「ああ、あの時言ってた事はこれか!」と気がつく事が多い。
司馬さんの小説やエッセイは読み易くて面白いが、それを支える土台となった「恐るべき知識量と洞察力」を伺い知るには、講演録や対談録を読むとよく判る。(これだけどんなジャンルの相手が来ても読ませる内容の対談が出来るのはそう無いと思う。)

対談相手は蒼々たるメンバーで、司馬さんをはじめ殆どの方が鬼籍に入っている。1970年頃から最晩年の1996年まで、日本の高度経済成長が終わりバブル経済や東西冷戦終結等、いま振り返っても、今日に至る分岐点の時代に語られていた内容だと思うと、どれもが意義深い。

各巻はタイトルが物語るように、テーマを持ってまとめられており、必ずしも時代順では無い。様々な出版社に存在する対談原稿と、その当時の担当者へのインタビューが行われ、その頃の時代背景が各章ごとに丁寧に整理されている。
又、巻末の「あとがき」は作家「関川夏央」が解釈する、対談相手とその時代や興味深いエピソードで、このあとがきだけでも、もう一度読み通す価値がある。

特に、湯川秀樹と「日本人はどこから来てどんな人種で構成されているのか?」と言った対談や、山本七平との「見えざる相剋」、岡本太郎と意外にも意気投合している事や、ダンディーな梅棹忠夫、桑原武夫と言った京都学派とはとても親しかった事を知ると、「一度でいいから、生で対談を聴きたかった。」とつくづく思う。

「座談の名手」「人たらし」と言われた司馬さんは、本当に話好きで、作家としてデビューしようかという頃、知人に自分の文章を読んでもらったら
「面白いけど、普段お前が話す方がもっと面白い。」
と言われて軽くショックを受けたそうだ(関川氏あとがきより)。そこで、出来るだけ自分がふだん話をする調子で、文章を書こうと試みたとか。。

インターネットが普通となり、スマフォという小さなコンピュータを子どもまでもが持ち歩く現代を司馬さんが見たら何と言うだろう。

「これが文明というものです。たれもが簡単なルールを覚えればそれに参加出来る。それが文明なのです。」(司馬遼太郎)

ああ、今でもこの定義はピタリ当てはまる。やっぱり司馬さんって凄い。

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