1960年代に書かれた本で、当時としては視点が非常に斬新だったとの事。池田先生曰く
「今読むと、常識的で理解し易いですね。」
確かに。「アルアル!」と相づちを打ちながら、サラッと読めてしまったから、当時としては、洒脱で鋭い観察眼からの書籍だったのだろうと思う。
- 日本はタテ割り方向のつながり意識が強い
- 小さな集団が縦方向に房状に連なっていて、横同士のつながりが弱い
- 「場」に居る事の方が優先され、「資格」によるつながりが弱い。(会社を越えた職種で組織された労働組合が存在しない。例:トラック業組合とか)
「構造的に仕組みを解き明かそうと言うよりは、機能主義的(つぶさに観察してその状態を解き明かす)記述で、確かにと思う所があるが、理論として弱いのではないか、、。」
というのが池田先生の感想で、今回の目的はどうやらこの本を深耕するというより、これを足がかりにして
「日本って国はとても特殊と言われているが、その中でも普遍的な構造をあぶり出してみようではないか。」
という所にあったらしい。
ナッシュ均衡
長年の謎だった「ナッシュ均衡」 |
アカデミー賞を取った非常に印象的な映画だったけど、あのマッチョなラッセル(だってグラディエーターですから。。)が数学者の「ジョン・ナッシュ」を演じている。
この映画の中で有名な「ナッシュ均衡」を発想するシーンが描かれている。ちょっと再現してみると。。
- バーで男子グループが飲んでいると、妙齢な年頃の女子グループがやってくる。
- パッと見て男子全員が「ピカイチ!」と思う女性がその中に一人居る。
- 男子達がこの「ピカイチ嬢」を巡って争奪戦を繰り広げると何が起きるか。。
- 「ピカイチ嬢」を獲得出来るのはたった一人の男子のみ。
- 残りあぶれた男子達は「そんじゃ」と女子グループの残りの女子達に声を掛ける
- ところが、「ピカイチ嬢」を巡る争奪戦を目の当たりにし、あからさまに「自分は二番手以下」である事が判ってしまった女子達は総スカンを決め込んで、あぶれもの男子達の誘いには応じないだろう。
- かくて、Happyな状態の男女は一人づつしか残らない。
- だが、もし男子達が「全員ピカイチ嬢には決してアプローチしない」という協定を組んで守ったとしたら。。
- 各自、二番目に良いと思う女子にそれぞれアプローチし、女子達は「自分は一番に選ばれた」と考えるので、カップル成立の確率が高まる。
- かくて、Unhappyな人は「ピカイチ嬢」のみで、残りの男女はHappyとなり、全体としてHappy度は高くなる。
- だから、全員で「ピカイチ嬢を無視する」という戦略を取るのが一番利益が高くなる確率が高まる。
「う〜〜〜ん、ちょっと違うかなぁ、、。」と言っていた。
彼はどうやら学生時代に「ゲーム理論」を読んだ事があるらしく、この映画の筋書きが、正しく「ナッシュ均衡」を説明しているとは思わなかったらしい。
そして、その時の私と言えば、そもそも何を言ってるのかさっぱり判らず、でも
「何だか面白そうな定理だな。」
としか記憶出来なかった。では今、なぜスラスラと筋書きが再現出来たのか、、それは池田先生のお陰なわけです。
ゲーム理論
昨日の読書塾の目玉はズバリ「ゲーム理論」でした。
池田先生のブログでも「ゲーム理論」は多く語られている(「ゲーム理論による社会学の統合」)私も何度か読んでみたけれど、途中で理解が追いつかなくて、今ひとつ(というよりも全然)判らない言葉の一つだった。やっぱり、ライブは違う!行きつ戻りつ、ホワイトボードに描きながら、「超簡単ゲーム理論」の解説をして下さった。
下図は、その内容を清書してみたものである。
ごく簡単に解説すると。。
- 二人の人物(A/B)が、互いに借金をする想定で「協力」「裏切り」の2 X 2のマトリックスを組んでみた。
- ピンク色のマスがズバリ「ナッシュ均衡」の状態で、双方「裏切る」という行動が前提となっているから、どちらかが、もう一方の行動(協力)を取ろうとすると「やりたい放題」の状況に陥ってメリットが無く、動かない状況になる。(疑心暗鬼の状態)
- 一方、緑のマスはこの4つのマスの中では「長期的関係」が前提となるなら、一番メリットがある選択肢。「やりたい放題」のマスに比べたらメリットは少なく、「やりたい放題」に簡単に遷移してしまう可能性をはらんでいる。(ナッシュ均衡はそもそも動く事を牽制しあった膠着状態)
そして、ここからが池田先生の真骨頂。このゲーム理論の簡単な図式を元に
- 個人単位で考えたら「やりたい放題」状態を選択するのが合理的
- だが、あらゆる国の、あらゆるグループが組織を維持する為に「長期的関係」の緑のマスを維持しようと苦心して来た。
- その為には「やりたい放題」のマスへ一度でも動いた者は「許さない!グループから排除する」という規範を作って「長期的関係」のマスを維持して来た。
- その規範を維持するのに欠かせないのが「裏切り者は卑怯である」という感情である。
ああ、そうか!感情とはとても高度な人間の意識なのだ!!と直感的に思って久々に学びの嬉しさを感じましたねぇ(^^)
日本はこの「長期的関係」を維持しようとする動きが極端に強いのでは無いか、、、。狭く移動が困難で、地域で顔を付き合わせる社会では、すぐに「裏切り者」の情報が電流のように流れて
「誰がどう裏切ったか、みんなが知っている。」
「みんなにすぐに知れ渡ってしまう事を、みんなが知っている。」
という状態が、強烈な規範となっている。(村八分とか)
何も、これは日本に限った事では無く、古くは地中海商人(マグレブ商人)やらベニスの商人やらにも「規範を守らせる」工夫は凝らされていて、その方法や強さに国の違いがあるのかもしれない。。
というのが、この回の主題と言えそうです。
「長期的関係」ってやっぱ凄くいいのね、、と思いたくなりますが、アニハカランや。
クルクルとその関係の中で、やり取りを繰り返してしまうと、それはそれで「動かない状態」となってしまい「ナッシュ均衡」と性格は違うものの、「新しい世界へジャンプ」するキッカケが生まれにくいという点では相似形を成していそうです。
じゃあ、どうやったら均衡を破る事が可能なのか??
いやいや、まだまだ先は長いですね。でも「ゲーム理論」のスカートの端だけでも掴めたのは快感でした。
メーカーに勤めていれば「長期的関係」が如何に居心地良く、 そして、それを解消するのに非常な痛みを感じるか、よ〜〜く判りますよね。
ツーカーで試作や下請け製造を担ってくれた国内の協力会社さん、、上からの命令一下、海外に拠点を移さなくてはならない時の苦悩と苦痛。。
「ああ、国内だったらもうとっくに出来ているのに。」
コストを下げながら、何とか同じ品質で安く生産出来ないか。。
多くの同僚が嘆息しながら、苦心惨憺していたのを思い出します。
それでも、緑の枠から飛び出さないとグローバル社会で生き残れない。。
そんな事を考える読書塾でした。
来週はいよいよ輿那覇先生です!いやぁ〜〜楽しみですね。
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