一ヶ月再放送で、休止されてたこの番組。9月に入ってまた開始されました。その間、これまで放送分の書籍を読んだけど、これもなかなかコンパクトにまとめられて良かった。 (そのエントリーはまた別の機会に)
さかのぼり日本史 幕末危機が生んだ挙国一致 第1回「王政復古・維新の選択」
さて、動乱の幕末と言えば、ネタも豊富でファンも多い。その時期のターニングポイントにどれを選ぶのかなと思ったら(とにかくこの時代はターニングポイントだらけ)「王政復古」ですか。さすが、ずっと研究してらっしゃる方は、視点が深い。
去年の大河ドラマの影響で、どうしても「薩長同盟」とか「大政奉還」あたりが脚光を浴びがちだけれど、「王政復古」はその持つ意味が違うと、三谷博先生(今月の解説)は考えるのだろう。
日本史では「大政奉還・王政復古の大号令で幕藩体制は崩壊し、以後近代化への道へと、、。」とワンセットのように習って、両者の違いにあまり注目されないが、よく考えると、
・大政奉還→徳川慶喜が「してやったり!」
・王政復古→岩倉具視が「してやったり!」
で、その後の展開を左右する、重要な切所だった訳である。
「幕末ってよくわからない(且つての私もそう)」と嘆く人は、このあたりの機微を上手にガイドしてくれる日本史の先生に出会えなかったからだろう。
幕末とは不思議な時代で、動乱しているのに、参加者全員が「このままではいかん!」という感覚を共通して持っていた所にある。言い換えると、その事に鈍感な役者が都合良く舞台から退場している点が、絶妙としか言えない。
やや番組から逸れるが、「鈍感」の代表と思えるのが、慶喜の前の将軍の「徳川家茂」と明治帝の先代の「孝明天皇」ではないかと、個人的に思う。。。「鈍感」とは言い過ぎだとしても、この二人が急逝しなかったら、大政奉還も王政復古も無かったろうと思う。二人は5ヶ月と離れずに相次いで亡くなってしまうのだ。(1866年8月29日家茂、1867年1月30日孝明天皇)
孝明天皇は自分の異母妹を、家茂に嫁がせ(和宮降下「公武合体論」ですね)徹底した異国嫌いで、基本的には国の舵取りは徳川がする。。と思っていたお人で、公家の中でも下位だった岩倉具視は、和宮降下の手配をする等、孝明天皇の近習として仕えるが政争に破れて、謹慎蟄居の不遇をかこっていた事がある。この時期、幕末の志士達と多く接触して「倒幕派」へと転向して行く。
話を番組へ戻すと、大政奉還で征夷大将軍という任を、朝廷へ投げ込む様に(と司馬さんはよく言う)押っつけた慶喜は、藩主をメンバーとする「合議体」で政治を行い、その元首の位置に徳川家が着こうと目論んでいた。
岩倉はその手の内がよく分かるので、誰の言いなりにでもなる明治帝(当時僅か14歳、仕方無いですね)に「王政復古の大号令」を上奏して、それを勅旨として発行させてしまう。それも、薩長土肥の軍に御所を堅く固め、慶喜の居ない隙を狙って閉め出す形で出してしまうのだ。(王政復古には徳川家の領地没収という事まで含まれていた)
「とにかく、外側だけ変わったように見えて、中身が変わらない(相変わらず徳川が一段高い)のでは、何もならない。」と岩倉具視は信念の様に思っていた、、、と三谷先生は語る。この後、鳥羽伏見の戦い、戊辰戦争へと内乱を迎えるのだが、幕府の息の根を止めるきっかけが、王政復古だったという認識は今まで薄かったなぁと思う。
そもそも、岩倉具視って「500円札」(古い!)ドラマでも「公家の癖に策略家」とかどうしても薩長に視点が行きがちで、言わば
「メンドクサイ、役所の手続きに妙に詳しく、倒幕の志士に理解のあるおじさん。。」
という理解しかしていなかったが、なかなか策士だったのねと改めて理解した。
この時代、どの階級でも「下位」の人間の方がリアリズムを持っていたんですね。
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