小野不由美「十二国記」公式アカウント投稿より。 |
十二国記を読んだ事がある方向けの、ネタバレ全開の内容です。未読の方には悪しからず。
十二国記を読み返す
「驍宗はどうなってしまったのか?角を失った泰麒、隻腕の李斎、何の力も持たない二人で戴国へ旅立ってその先一体何が待ち受けているのか。。。」
、、で途切れてしまって、早18年。私は10年待ちだから「初期のファン」に比べたら半分しか待っていない若輩者だが、それにしても「この続きが未完だなんて。。」と、一人で小さく叫んでしまったのを今でも覚えている。
「十二国記」を誰かに勧めるのはとても難しい。。実際「どこから読み始めるか」で「月の影〜」ルートと「魔性の子」ルートがあって、ファンの間でも意見が別れるところらしい。(私は「月の影」からルート)
物語の設定を「王様が居て、麒麟が居て、十二の国があって。。」と箇条書き的に羅列すると「ああ、よくある異世界ファンタジーね。」で片付けられて「そうじゃないんだ、もっと深い話じゃないんだ!」と力説して一人空回りする「悲しいループ」に入ったりもする。(涙)
因みに、私は普段そんなにファンタジーは読まないので、「きっと〇〇みたいな作品だね。」と言われても、〇〇を読んだ事が無いから比較検討の上「いや違う!」って反論が出来ず、悶々とする事がとても多い。(^_^;)
そんな事もあるけれど、どう言われてもファンである事に揺るぎは無いので、新刊が出るにあたり、急いで既刊本の読み返しを始めている。講談社文庫時代に二度、新潮社から完全版が出た時にもう一度読んで、今回で四回目の「通し読み」を現在進行中だ。
既に知ってる内容ばかりだけれど、待ち続けた10年を経て読むと、以前読んだ時とは違う印象を受けるから物語は面白い。
大好きな驪媚(りび)〜その他市井の女性たち〜
この長い物語で大好きな人物は多いが「東の海神 西の蒼海」に登場する驪媚は特に印象的で心に残る。
彼女は、自分が最も危険な立場に追い込まれる役職であるのを承知の上で、尚隆からの任命を受け、自分の命を差し出す事で、考えの浅かった六太を諭す。
渾身の迫力で「尚隆の考えていること」を六太に説明するくだりは、何度読んでも唸って痺れる。そして結末を思うと、より一層切なくもなる。
私がもし驪媚だったら、あの様に自分の命と引き換えに役目を果たす勇気があるだろうか?そんな事も考えるし、彼女の聡明さを見抜いて「すまぬ」と謝りながら死地へ赴かせた尚隆とのやり取りを読むと、上司と部下と言う関係を越えた、堅い信頼の上で「何としても国を興す」というそれぞれの決意に凄く心打たれる。
この巻には他にも「意を決した女性達」が複数いて、赤ん坊を抱きながら「徴兵に志願しに来た若い母親」や、六太を牢獄から逃した罪に問われて「妖魔に食い殺される女官」など、市井の名もなき民でありながら「この国を揺るがせにしてなるものか。」という、彼女らの必死の想いが、新しく王として立った尚隆を支えている。そして、その想い一つ一つを「我が身」と称して想いやる尚隆は、やはり優しくて器が大きい。
「東の海神〜」はその尚隆の「戦略判断」が、小気味いいほど安定していて「大逆転の勧善懲悪」なカタルシスがある。テンポ良く、ハラハラと物語は進むけれど、実は一番安定した娯楽性の高いエピソードだなと私は思っている。
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2019年10月12日(土) いよいよ、待望の新刊発売日なのに、超弩級の大型台風19号が接近中で、どうやら初日に新刊を手に出来る人は少なさそうだ。
十二国ファンは「蝕だ」と言ってネットで騒いでいるが、今回の台風で甚大な被害が出ないよう、祈るばかり。
そろそろ、新刊を手にした第一陣の「ネタバレ感想」が出て来始めるから、ハッシュダグ検索は控えるようにしないと。。
待ちに待った愛読者の心の中にも「王が御渡りになる蝕」が起きることになるだろう。