2019年11月4日月曜日

十二国記「白銀の墟 玄の月」(一)(二) ネタバレまとめ

18年ぶりに「十二国記」の新刊が出て、ファンの間では「続きが待ち遠しい!」と話題の「白銀の墟 玄の月」ですが、いよいよ続きの三巻、四巻の発売が今週末に迫って参りました。
今回は『続編発売直前・おさらいまとめ』として、ネタバレ全開で一巻、二巻の出来事を可視化してまとめてみました。加えて、気になった「チェックポイント」もメモしています。
ネタバレ全開ですので、新刊未読の方はここから先は各自のご判断でどうぞ。又、「十二国記」を読んだ事が無い方にはサッパリ判らない内容ですので悪しからず。

メモを取りながらの二度読み
一度読んだだけでは詳細が頭に入らないので、メモを取りながら再読。メモは7ページにも及んでしまった!
 「十二国記」読者なら「あるある」だと思うけれど、このシリーズはとにかく「難しい漢字の固有名詞」のオンパレードである。頻繁にルビをふってくれているものの、途中で「???何て読むんだったっけ???」と戸惑う、人物名やら、地名やらが出て来て、それに悶えて悩むのも「十二国記の楽しみ」の一つである。

 けれど、今回の新作はこれまで以上に、登場人物が多く、地域を移動する描写がかなり混み入っていて、私なぞは途中から「李斎達は今何処に居るんだっけ?」と、場面設定が曖昧になってしまった。
 「これでも相当に内容を削った」と、最新インタビューで小野主上(!)は証言されていたが、今以上に緻密だったのかと思うと、小野不由美氏の構想力の高さには本当に脱帽する。

 漢字の「よみがな」やら、起こった出来事やらを書きながら再読したら、メモが7ページにもなってしまったので、折角だからその内容を可視化してみた。

 以下、続巻を読む時の参考になるかも知れないので。。


地図に足取りと出来事をプロット
 職業柄、情報を可視化する事が多いので、今回、自分用にメモした内容を、少し整えて物語の地図に落とし込んでみた。
 各巻の巻頭に掲載されている「十二国記」の地図を、独自にトレースして、自分好みに加工した上に
  • 登場人物の足取り
  • 里廬別の出来事
  • 驍宗の目撃証言
の3つを、それぞれにプロットしてある。 ちょっと高めの解像度で書き出しているので、スマホでは拡大表示したり、或いは、画像だけプリントアウトして読書中の「栞」替わりに使って頂いても便利かも知れない。

泰麒と李斎が戴へ帰って来てからの足取りと、順次加わっていく「旅の仲間」の名前を整理。最初に読んだ時は「鄷都」が加わったあたりから、人物の区別が段々つかなくなって苦労した。

里廬別に、重要と感じた出来事と登場人物のみを整理。文州に入ってからの動きを時系列に矢印で地図に落とすと、見た目が煩雑になって分かりにくくなってしまったので断念。

切れ切れに集まって来る、驍宗に関する情報を場所別に整理。「轍囲へ抜ける山道を丘の上から見下ろしていた兄弟の証言」の位置が、地図に落としてみるまで勘違いしていた。
実在しない場所の地図を、ここまで作らなくてもいいだろうと、自分でも苦笑しつつ、文章で読んでいるだけだと、今ひとつイメージが湧かなかった「文州周辺」の話が、地名を頼りに落として行くことで、互いの里廬の位置関係が見えて来た。
 恐らく、小野不由美氏も最初に地図を作ったはずで、そこから物語を紡いでいる様子が垣間見えて、堪らなく面白い。

 例えば、嘉橋から轍囲へ行くのに
「街道を使えば6日かかるが、山道を使えば3日で行ける、途中山道で一泊しなければならないが、その方が早いので轍囲の人間はよく使うんだ。」
という証言の箇所など、最初に読んだ時は「ふーん」と流してしまったが、地図作業をしてみると「おお!こっちの道だったのか〜!」」という発見があって、それだけでも「描いてみて良かった。」と思ったりする。


三、四巻へ向けてのチェックポイント
 既に読み終えた読者諸氏におかれては、いろいろと「ここポイントだろう!」と数々に散りばめられた「伏線」を巡って、あれやこれやと推理する楽しさの真っ最中ではなかろうか。
 私も御多分に洩れずなので「気になったポイント」を以下にまとめてみたいと思う。
  • 十二国記初「宗教団体」の存在
    • これまでの十二国記では「民の暮らし」は詳細に描かれてはいるものの、宗教に関して言及されている話は無かった。
    • ところが、今回、阿選を「王位の簒奪者」として糾弾した、瑞雲観(道教)の存在が大きい。政府とは別に「組織だった団体がある」という設定は、十二国記読者にとって、なかなか新鮮な感覚では無かろうか?
    • しかも、「瑞雲観」と「石林観」という宗派で、確執があるという設定が、なかなかリアルで、これまでは、王の『徳の優劣』に翻弄される『か弱き民』、という割とシンプルな直接関係しか無かった世界に「イデオロギー」が介在し始めているのかな?と思うと、往年のファンにとっては、この進化もたまらなく面白い。
  • 驍宗腹心の部下達の安否や如何に?
    •  逃走して行方不明の人物:英章、霜元、臥信、芭墨、花影
    • 白圭宮に居ると思われる人物:琅燦、巌趙(下僕に降格?)、正頼(監禁?)
    • 「黄昏の岸 暁の天」でもお馴染みの、驍宗政権の中枢メンバーは、琅燦以外、とうとう一、二巻では登場しなかったが、琅燦と阿選の「不思議な支配関係」は続編でも必ずや重要要素になると思われる。
    • 一見「裏切ったか琅燦!?」と思える振る舞いをしている彼女であるが、作中の彼女は、阿選は「呼び捨て」、驍宗を「様」付けで呼んでいる所に、彼女の真意があるのではと思える。博覧強記の才女であるから、深謀遠慮の末の行動なのでは??と期待もしている。(^ ^)
  • 新世代の主役達
    • 女私兵「耶利」と、驍宗を看取ったとされる「回生」が、若き新世代の主役達になるのは、ほぼ確実。(たぶん)
    • ファン心情としては「二巻の結末」は「いやいや、これでお終いじゃないでしょう!」と誰も信じていない状況ではあるが、果たしてここから、どう「理屈」を付けて話が進んで行くのか、小野主上の「ストーリーテリング」の手腕に、ただただ期待をしたい。
    • 因みに、、耶利の「主人」は琅燦ではないか?と私は睨んでいる。
  • 阿選は何を語るのか?
    • ネットですっかり有名になってしまった「鳩の鳴き声」が、阿選を取り巻く環境に蔓延する「何事にもやる気を失う」どんよりとした空気の誘発剤になっていそうなのは確かであるが、、一体あの正体は「何」なのだろう?
    • 悪事ですら「やる気がなくなる」とは、なかなか斬新な設定で「そう来たか!」と思っているが、「感染する人、しない人の間にある違い」も含めて非常に気になる。
    • そして、阿選は十二国記の中で、これまでまともに語った事が無く、一体何を考えているのか、内面が掴みにくいキャラクターなので、そこの部分にも言及があるのではないか?
  • 無名の人々は一体誰なのか?
    • 伏線として、数多くの「無名の人々」の描写が挿入されているが、特に気になったのが。。
    • 姉が飢え死にをしてしまった、貧しい三姉弟妹(函養山に向かって毎月供養をしていた)
    • 卵果が落ちて割れてしまったのを悲しんでいた若い閭胥。

 これ以外でも「あれは何?」「あの人は誰?」と謎が尽きない訳であるが、語り出したらきりが無いので、今回はこの辺で。。


 続巻発売後、答え合わせ的に「最終まとめ」も書かなくちゃならないだろうなぁ。。。
ともあれ、残りの数日を一日千秋の思いで、絶賛待機中である。

2019年10月12日土曜日

十二国記を待ちわびる 〜18年ぶりの新刊に寄せた雑感〜

小野不由美「十二国記」公式アカウント投稿より。
「十二国記新刊発売」の報を聞いて、何か書き残しておきたくて。。
十二国記を読んだ事がある方向けの、ネタバレ全開の内容です。未読の方には悪しからず。

十二国記を読み返す
「驍宗はどうなってしまったのか?角を失った泰麒、隻腕の李斎、何の力も持たない二人で戴国へ旅立ってその先一体何が待ち受けているのか。。。」

、、で途切れてしまって、早18年。私は10年待ちだから「初期のファン」に比べたら半分しか待っていない若輩者だが、それにしても「この続きが未完だなんて。。」と、一人で小さく叫んでしまったのを今でも覚えている。

「十二国記」を誰かに勧めるのはとても難しい。。実際「どこから読み始めるか」で「月の影〜」ルートと「魔性の子」ルートがあって、ファンの間でも意見が別れるところらしい。(私は「月の影」からルート)

物語の設定を「王様が居て、麒麟が居て、十二の国があって。。」と箇条書き的に羅列すると「ああ、よくある異世界ファンタジーね。」で片付けられて「そうじゃないんだ、もっと深い話じゃないんだ!」と力説して一人空回りする「悲しいループ」に入ったりもする。(涙)

因みに、私は普段そんなにファンタジーは読まないので、「きっと〇〇みたいな作品だね。」と言われても、〇〇を読んだ事が無いから比較検討の上「いや違う!」って反論が出来ず、悶々とする事がとても多い。(^_^;)

そんな事もあるけれど、どう言われてもファンである事に揺るぎは無いので、新刊が出るにあたり、急いで既刊本の読み返しを始めている。講談社文庫時代に二度、新潮社から完全版が出た時にもう一度読んで、今回で四回目の「通し読み」を現在進行中だ。

既に知ってる内容ばかりだけれど、待ち続けた10年を経て読むと、以前読んだ時とは違う印象を受けるから物語は面白い。

大好きな驪媚(りび)〜その他市井の女性たち〜
この長い物語で大好きな人物は多いが「東の海神 西の蒼海」に登場する驪媚は特に印象的で心に残る。

彼女は、自分が最も危険な立場に追い込まれる役職であるのを承知の上で、尚隆からの任命を受け、自分の命を差し出す事で、考えの浅かった六太を諭す。
渾身の迫力で「尚隆の考えていること」を六太に説明するくだりは、何度読んでも唸って痺れる。そして結末を思うと、より一層切なくもなる。

私がもし驪媚だったら、あの様に自分の命と引き換えに役目を果たす勇気があるだろうか?そんな事も考えるし、彼女の聡明さを見抜いて「すまぬ」と謝りながら死地へ赴かせた尚隆とのやり取りを読むと、上司と部下と言う関係を越えた、堅い信頼の上で「何としても国を興す」というそれぞれの決意に凄く心打たれる。

この巻には他にも「意を決した女性達」が複数いて、赤ん坊を抱きながら「徴兵に志願しに来た若い母親」や、六太を牢獄から逃した罪に問われて「妖魔に食い殺される女官」など、市井の名もなき民でありながら「この国を揺るがせにしてなるものか。」という、彼女らの必死の想いが、新しく王として立った尚隆を支えている。そして、その想い一つ一つを「我が身」と称して想いやる尚隆は、やはり優しくて器が大きい。

「東の海神〜」はその尚隆の「戦略判断」が、小気味いいほど安定していて「大逆転の勧善懲悪」なカタルシスがある。テンポ良く、ハラハラと物語は進むけれど、実は一番安定した娯楽性の高いエピソードだなと私は思っている。
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2019年10月12日(土) いよいよ、待望の新刊発売日なのに、超弩級の大型台風19号が接近中で、どうやら初日に新刊を手に出来る人は少なさそうだ。
十二国ファンは「蝕だ」と言ってネットで騒いでいるが、今回の台風で甚大な被害が出ないよう、祈るばかり。
そろそろ、新刊を手にした第一陣の「ネタバレ感想」が出て来始めるから、ハッシュダグ検索は控えるようにしないと。。
待ちに待った愛読者の心の中にも「王が御渡りになる蝕」が起きることになるだろう。